田舎の休み方の前向きでないたしなみ

 

 7月31日に農協青年部でやる花市の当番表が送られてきた。花市とは農協の灼熱の駐車場にぽつねんとテントを広げて墓参り用の菊を売るのだ。ここら千曲川上流地域では江戸時代にあった戌の満水という大洪水での大勢の死者のお墓参りを8月1日に行なっていたことから盆の墓参りもこの日にしちゃえという風習が残っていて、毎年この日に墓参り用の菊を農協青年部が地元の菊を花卉出荷場から買い付けてきて売りさばくのである。
 
 とはいえ今の時代、都会に出た息子たちが里帰りするのは全国共通の盆の時期であり必然と墓参りも通常の盆に移行していく。また単純な人口減、地元のスーパーでも花を売ってるという当たり前の要素が原因で青年部の花市の売上も年々下がるばかり。お客は数えるほどしかおらず5万円分仕入れて5万円分売れれば御の字という訳のわからんことを行なっている。
 そして終わったあとは寿司屋で打ち上げて青年部の余りがちな予算を消化するというちょっと常人には説明しがたい状況なのである。しかもこの時期、花市に招集される青年部員13名(地元農家6名新規就農者7名うち有機農家4名)がこの夏のかきいれ時に花市のために損失する経済は天文学的数字(例えば銀河系内に存在する知的生命体の数)に達する。
何度か「もう止めない?」と提案したんだけど「それでも求めている人がいるから」というありがちな理由で続いているのである。
 
 私が推測するに結局のところ、田舎の人(と限定していいのかは悩むが)の「休みベタ」みたいなところに由来するのではないかと思う。昔から村ではみんなと同じ仕事してれば食いっぱぐれなかった。となりが田植えをすれば田植えをして稲刈りをすれば稲刈りをする。中には共同で行う作業もある。そうなると「自分だけ休む」ということがしにくくなる。必然的に休みは農繁期中に何度か入る農休みや祭りなどの行事小満やら七夕やら盆やら彼岸で村じゅう一斉に休むことになる。
しかし時代の流れとともに農村共同社会は崩壊し「忙しい」という理由で「共同休み」は消えていく。そんな時に優先して消されるのが「楽しい」行事である。具体的には伝統的な祭りや伝統芸能に費やされてきた時間がそれである。別に無くても生活には直接的影響はない。
 
 そして残っていくのが「仕方なくやっている」行事である。水路や道路を保守管理する「普請」は当然としても、今回の花市とか消防の出初やらポンプ操法大会やら各種「会議」など、その存在意義に疑問がもたれるもしくは改善の余地があるようなものを「仕方ないから」と残しておいて、その都度「慰労」するのである。
ぶっちゃけ飲み会がしたいなら昼はちゃんと働いて稼ぎ1人5000円でも持ち寄って飲み会をしたほうが飲み会効率的にはいいはずである。しかしそこを全員が全員「まったくこの忙しいのに花市?やれやれだぜ!でもまあ仕方ないかー」といって仕事をサボる。のが田舎のたしなみ。なのかな?
 
ちなみに花市当番は午前11時から夕方5時まで3交替制である。
最初のお昼近くは有機農家も野菜農家も出荷やら植え付けやらで忙しいので酪農農家が中心で当番。昼から3時ころまでは一般野菜農家中心。のろまな有機農家はまだ暑い中働いている。そして3時から夕方までは有機農家中心。酪農家は乳搾りだし、一般農家は夕方は農薬撒いたり「夕切り」という収穫の時間なのである。
 そういうわけなので7月31日の夕方はぜひJA佐久浅間駐車場に来て現役バリバリの恋人にでも菊の花を買って行って欲しい。ブログやらフェイスブックを見てきたといってくれれば、お客がいなくて暑い中だらだらしている私達の話し相手として30分くらい拘束しちゃうぞ!

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