制約条件に従う有機農業経営

今日は私が研修を受けていた有機農業のメッカとも言うべき埼玉県小川町の有機農業の勉強会にお呼ばれして勉強会講師を努めさせた頂くことになりました。非常に光栄なことです。

私は15年間、どちらかと言うと中山間地の分散した小規模農地の中で、
火事やら高速道路インター建設、広域農道、ゴミ焼却場建設計画、3回の引越しなどで先も見渡せない中15年やってきた感じです。
先を見通せない中では先行投資みたいなこともできず、徐々に農場を固めてきました。

有機農場初期

(あさひや農場の初期の圃場位置図。赤が自宅、オレンジが1反以上青が1反未満の圃場。

中山間地なので各圃場面積の3割から4割が畦畔になる。黄色は高速道路予定地などの不確定要素。)

hajime

(現在のあさひや農場圃場位置図、自宅は地図北東の外になる)

そんななかで常に意識してるのがTOC(制約条件の理論)というものです。
難しそうですが、要は全ての活動を自分の一番弱い部分、一番面倒な部分、手間のかかる部分、作業時間が長い部分に合わせ、まずはそこから投資していくというやり方です。
よく言われる「長所を延ばす」のではなく「短所を埋めていく」形になります。

もちろんこれでは爆発的に経営が伸びることはありません。
才能のある人はイケる部分に集中して伸びてるとこに合わせていきます。
ただ誰もがそういう才能や条件にあるわけでもなく、守りの経営をすべき局面やステージはあると思います。
そういったことを踏まえ「有機農業と桶 ~制約条件のに従う守りの農場運営~」というテーマでお話させていただくことにしました。

これは作物管理にも通じます。植物生理で言えば「ドベネックの桶」がイメージです。
作物を育てる各要素、窒素リン酸カリなどの各肥料や天候、水分などの中で最も制約を受けているものに作物の生育は制限されるというものです。このバランスを保つために、もしくはこのバランスを最高レベルまでに上げるために土壌分析と施肥設計をしているわけですが、どんなにバランスよく育てて健康に野菜が育つ条件ができても、それで野菜ができるわけではありません。
良い野菜ができた時にそれを管理していく労力や出荷先がなければせっかくバランスよく入れた肥料代がパーになります。
つまり経営のどこかを伸ばしてもボトルネックを解消しなければ無駄な投資になってしまう事が多々あるのです。

しかし、実際にはドベネックの桶のように必ずしも制約要素に囚われることなく、各要素が補完しあったり、牽引役となって不足している要素まで引き上げることがあります。
成功している農家さんはいい場所を伸ばして他をそれに合わせます。
例えば先行投資で大きな機械を買う、出荷場を作る、取引先を見つけることでモチベーションを上げたり、火事場の馬鹿力のようなパワーを発揮したりするのです。
もちろん、それには伸ばせる環境や体力、資金、才能、そして何より努力が必要であり、
また多くのリスクも抱えることになります。

長所を延ばす経営にもリスクはありますが
短所を埋めていく経営もねびるべき時に伸びないというリスクがあります。
しかし一番恐ろしいのは変われないということです。

局面においてはどちらも必要であり、今回私は守りの部分についてお話させて頂こうと考えています。


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