ご飯は主食か嗜好品か?

「炭水化物が人類を滅ぼす」という本を読みました。

植物が光合成で作った炭水化物をお客さんにお届けするのが仕事の農家としては
「炭水化物が人類を滅ぼす」は誰よりも聞き捨てなら無い台詞だからです。

内容としては「糖質制限」という健康法もしくはダイエット法について、
著者の個人的体験から始まり体験者の声、
そして人間の生理から始まり日本の医療問題、
経済史、生命進化、人類の進化から農耕の起源と最終的にはかなり壮大な「仮説」を展開されています。

表題では「炭水化物」となっていますが、穀類の小麦とお米、イモ類などわれわれが主食としてるものと
砂糖やビールや日本酒などデンプンや糖分が多いものを示しています。

そして糖分そのものは体に必要なものだけど、
それは体内でたんぱく質から合成するのが基本という仮説で成り立っています。

栄養学で言う三大必須栄養素のひとつ炭水化物は決して必須なものではなく「嗜好品」であるとしてあります。
「嗜好品」
つまり実際には必要でもなく、食べると多幸感があり、大なり小なり依存性がある。

この定義の仕方は非常に興味深いです。
確かに人類は誕生して以来その殆どを穀物ではなく獣や魚や貝、
そして木の実などたんぱく質中心の生活を500万年以上続けてきて今ほど炭水化物を取ってこなかったのです。
TVでタレントさんが無人島生活をする番組がありますが、
あれなど見てわかるように自然の中では人間が食べることが出来る炭水化物はごく限られています。

農業が生まれて小麦やお米が主食になったのは本当につい3000年前ですし、
日本人もご飯もお菓子もお酒もたっぷり頂ける様になったのはこの50年です。
人類史の99.999パーセント以上は炭水化物が主食ではなかったのです。
人間以外で自然界でデンプンや糖分を主食としている哺乳類はあまりいません。

私も今年になってから糖質制限を試しています。
殆ど炭水化物は摂っていません。「ご飯を食べない分、肉とか余計に食べたらお金が掛かるんじゃ?」
と思われるかもしれませんが、全然そんなこと無いのです。
なぜなら「必要でないものを摂っていない」だけだから。

「炭水化物には依存性がある」とあるように、
ご飯を食べるからおかずが必要で、おかずがあるからさらにご飯がほしくなるのではないでしょうか? 
ジャムが美味しくてもそれはパンがあってのことです。
焼肉が美味しいのは白いご飯が合ってのことです。
ジャムや肉だけだとそんなには食は進みません。
肉も魚も沢山食べようと思ったら沢山のご飯や麺もいっぱい食べるのではないでしょうか?
ラーメン、チャーハン、どんぶり物、ピザ、パスタ、寿司と
食べ放題メニューやがっつり系メニューには炭水化物が欠かせません。

糖質制限といっても普段の食事から単純にご飯などの炭水化物を抜いただけで、
その分余計に高価な肉などのたんぱく質を摂っているわけでは在りません。
敢えて言うなら高くない大豆製品の納豆や豆腐や野菜を多めに摂るようになる位でしょう。

ただ、炭水化物が美味しいのも事実ですし、
ホカホカご飯と焼肉、焼きたてのパンとバターなどの美味しさは替えがたいものがあります。
ご飯でおなか一杯になる多幸感は家族や仲間との絆をより強くしますし、
多くの人の1日の原動力でもあります。

こういった幸せと安心感への欲求が人類は寒さに震えて獣を追っかけていた生活を捨てさせ、
目の前の獣を追うのではなく一粒の麦が半年後にたわわの穂を実らせることを待つという計画性を持たせ、
田畑や穀物の維持や貯蔵のために共同生活いう社会を構築し文明を発展させてきたのは間違いようの無いことです。

仮に炭水化物制限が本来の人間の身体機能のあるべき姿を求めたものだとしたら、
炭水化物摂取こそが人類が求めてきた幸せの象徴なのかもしれません。
どちらが良いのかではなく、どこら辺にバランスをとるのかが大事なのでしょう。

もちろん、この本の著者も書いてある様にあくまで本書の内容は「仮説」です。
本の容量からしても書き足りないとこや、データー不足、誇張表現などあるかとは思いますが、
納得できる箇所も多く大変面白かったです。
お奨めです。

炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)

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