農業を思いっきりしよう!有機から慣行へ転換した農場について

新規就農について「新規就農6年目」の記事から

  • HOME »
  • 新規就農について「新規就農6年目」の記事から

新規就農についてトラックバック

日本有機農業研究会発行 「土と健康」2003年Nо.353 6月号 より

新規就農6年目と言うことで、これからに新規就農者に向けてと言うことも含め今までのことを、現状や将来のこと不安や希望等について原稿を依頼され書きました。

「就農して6年 矛盾を極めつつ。」

信州に就農して6年目になる関谷航太(33)です。妻の千晴(27)と、あさひや農場という多品目少量生産提携型無農薬無化学肥料無認証有機農場を経営しています。千晴は半日のうちに1人で1反くらいジャガイモを間違えて植えて全部掘り返し、喧嘩になれば鍬の一本もへし曲げると言った働き者の力強い主力労働者兼2児母です。『全国有機農業者マップ改訂版』で最も浮いた農家として掲載してありますのでご参考下さい。この冬には長野県有機農業研究会大会実行委員長として、師匠であり目標である埼玉小川の金子美登さんを講師に招き、大会を地元の有機仲間と共に成功に終えたこと等もあり、ようやく信州に根をおろし始めたかなと実感しているところです。

農場が位置するのは信州八ヶ岳東面標高1100mの高冷地です。高原野菜が盛んです。そんなわけで私の家の前は広大な野菜畑が広がっているにもかかわらず、自分たちの畑は4キロほど谷を降りた山間にあります。2町6反、枚数にして28枚が点在しています。ただし中山間地の基盤整備もされていない農地なので実際には1町8反ほどのアメーバ-状の形をした田んぼと8反ほどの石の多い急斜面の畦がその内訳になります。

信州の有機農家は夏に冬の分も作付保存しなければならないので大変です。餅をついたり豆を煮たり貯蔵野菜を組み合わせて2月くらいまで消費者に出荷します。近くの有機農家と共同で果菜類、花野菜等を巨大流通にも流しています。

農法上のこだわりと言うのは特になく、科学的であること、独占的でないこと、循環型であること、より安全で、より理解しやすいことを根本においています。これらの要素は時として相反したりするので悩みます。「無農薬で有機認証基準のレベルの高いところあたりで、より多くの人に有機野菜を広める」くらいのところにとりあえず判断基準を置いています。山間の田は1枚1枚土質などが変わるので、土壌検査は必須です。経験が浅い分、過不足無いよう施肥を計算し、肥料による環境汚染や野菜の栄養不足には気をつけています。ちなみに、高冷地なので農薬を使用する必要はまったくありませんし、幸い私の圃場は通常の農家が経営を成り立たせる事が出来ない悪条件下なので、周りからの飛散農薬もほとんどありません。

ただ、私も千晴も学生時代に海外農業支援を目指していまして、ニューギニアやらチャドでの経験から、人の土地に理想を求めるのではなく、自分で理想の土地を作る事、、たかが国内で何倍か不利というだけで逃げることは、発展途上国の不利さを解決する事から逃げるのと同じだという事等ような変な理念があり、引越しを妨げています。

本来ならば、金や土地や経験なんて本当は我々新規就農者にはたいして重要じゃないと思うのです。金は借金したければ異業種よりも簡単に出来るし、金の代わりになるものも沢山田舎にはある。とんでもない土地なら腐るほどある。上司もいないのでどんな経験でも出来る。要は貯金か借金か、新品か中古か、広い土地か狭い土地かでは無く「与えられた条件で、いくら稼いだのか?どんな土地にしたのか?何を経験したのか?何をするのか?」が重要だと思うんです。でもそういった、「そりゃそうだよ…」的な理想が引越しを引きとめ、「でもね…畑は広いにこしたことはないじゃん)」的な現実が引越しを勧めている。土地の問題に限らずそんな矛盾のなかで6年が過ぎてきた様な気がします。

でも、冷静に考えればそう言う矛盾を抱えられるほど私達は贅沢と言うことです。常識で考えたら私はもう既にこの土地にいないでしょう。それを、理念だかなんだかで固執できるほどゆとりがあると言うことです。そのゆとりの分、自分を強い農家だと思います。農法にしても経営にしても、大会などの仲間とやる行事も、有機農家は一般農家が「そんなんじゃ食ってけねえ」「そん事やってる余裕は無い」ということを、好きでやるだけの余裕があります。新規就農にしてもそうです。都会の人が「そんなの夢だ」「理想だ」と言ってることを平気でやっています。この贅沢を考えるとぜんぜん苦じゃない。もちろんいざとなれば余裕を棄て「現実的にちゃんと働く」という選択肢もあるのです。

そんな感じで、10年後には引越してるか、ブツブツいいながらこの土地に挑戦しつづけてるか未定です。引越すと言っても、夢の一部を撤退するだけです。楽になるぶん他のことに挑戦すればいいのです。これまでも「ビニールを使わない」等数多くの理念から一時撤退してきました。しかしまだまだいくら棄てても捨てきれないほど有機の夢や理想の領域は広く、逆に増えてるとこもあるので、一生夢と現実の領土合戦を楽しみながら、この世界にいると思います。

最近は田の虫の宇根さんの話にも誘惑され、「小さい田もいいかな…」とかもおもちゃっています。今のところ今の土地に唯一の光を差してくれています。とりあえず昨年まで稲作をあきらめていた小さな田にも水を入れてみました。今はそんな感じです。

最後になりましたが、農村にはもっと新しい血が必要です。どんどん農外から来てください。自給的だろうが有機だろうが慣行農法だろうがそんな小さな違いはどうでもいいことです。農村は人手不足で危機的な状態にあります。私もあと数年したら、どうやって集落の水路や道路、畦などを維持していいかわかりません。しかし、そんな状況にも関わらず、農村に借りれる家がありません。新規就農される皆さんがぶつかる最大の問題だと思います。幸いにも廃屋でしたが家を借り就農できた者として、この件に関しては関係各位の一層のご尽力を期待したいところです。今後とも宜しくお願いします。


PAGETOP
Copyright © あさひや農場 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.