総合ミネラル肥料とミネラル単肥比較
標準的な投入量が鉄やマンガン以下の微量要素に関してはJAS有機基準でも
「微量要素欠乏により、作物の正常な生育が確保されない場合のみ使用すること」
としか書かれてないません。
他の肥料と違って原料や製造工程で使用の可否が決まるわけではないので、
ほとんど硫化鉄や硫化マンガン、ホウ酸塩と言ったほとんど原体の単肥ミネラルを使ってきました。
亜鉛や銅だけは散布量が少なすぎるので総合微量要素剤を使う感じです。
慣行農業を行うにあたり、一般にJAが推奨している総合微量要素材があるので、
それと、単純に成分量対コストで比較してみました。
比較するのは
総合微量要素剤として「BMマルチサポート1号」
リンク先は単にマルチサポート1号です。
普通BMと書いてあるのはホウ素とマンガンが強化されてるのですが、成分表示的には同じ内容です。
きっと大人の事情で名前が違うのでしょう。
単肥ミネラルは以下のもの
苦土石灰
アイアンパワー
マンガンパワー
クワトロミネラーネ
ホウ酸塩
比較にあたりジャパンバイオファーム社の設計ソフトを使わせていただき、
想定土壌のCECが20で苦土・鉄・マンガン・ホウ素の土壌中有効量をわかりやすく0ということで比較しました。
製品価格は送料など考慮して「おおよそ」です。
BMマルチサポート1号を100kg施用した時の成分量と価格、
その時と同じ成分量を単肥ミネラルで賄うときのそれぞれの必要量と価格を比較します。
まずはマルチサポート単体
何も考えず100kg入れたときです。9510円。
肥料成分は真ん中あたり、
土壌に入れたときのバランスは施肥後の補正値見るとわかりやすく、
これだけだとマンガンが不足がちです。
いずれにしろマンガン単肥の補正が必要。
今度は、マルチサポート1号とほぼ同じ成分量をそれぞれ単肥で入れた時。
4049円です。半額以下。総重量は12kg増し。
マルチサポートの苦土の部分を補強するのに苦土石灰も入ったおかげで石灰が39kgついての値段。
単純に鉄とマンガンだけを再現すれば高価なクワトロミネラーレを使わないので済むのでもっと安く済みますが、
この設計シートに表示されないマルチサポートの銅を単肥で再現するのに銅が入ったクワトロミネラーネを加えてあります。
もちろんこちらでも施肥後の補正値においてマンガンが不足していますが、
ここは単肥の良いところで実際には他の成分も含めて土壌に合わせてバランスを細かく整えられるのが単肥の魅力です。
単体とそれを組み合わせた総合微量要素肥料では原料を混ぜる分、
総合微量要素肥料のほうが高価になるのは想像つきますが、
価格が2倍となるは思いませんでした。
もちろん肥料は成分と価格だけではありません。
畑に均一に成分を撒こうと思ったら確実に総合微量要素剤のほうが勝ります。
ホウ素などは1反に500g~1kgとかのレベルですから、
他の肥料に混ぜて撒くにしても農家レベルでは工場製品レベルに均一に混ぜられるわけでもなく、
特に粉末のミネラル単肥などはすぐに風で舞ってしまいます。
慣行農業の方は面積も多く、むしろ作物の均一性が求められるし、
多少の要素欠乏由来の病虫害も農薬でカバーできます。
そういった意味では慣行ならミネラルサポートもありかな?
有機だったらもちろん細かく成分を設定できる(そして安い!)単肥が良いでしょう。
私は基本的には安価の単体ミネラルを使い、
ミネラルバランスの整ってる畑や風の強い時期にはマルチサポートを使うなど使い分けたいと思います。
~追記~
マルチサポートの珪酸成分が成分珪酸に入ってないとのご指摘がありましたので追記します。
ケイ素に関しては銅やホウ素と同じく簡単な土壌分析では測ることができず、
そして銅やホウ素のように要素過剰による害もないので、
私は必要と思われる畑には100kg~150kgくらい入れたりします。
そういうわけで普段は施肥設計計算とは別に考えているので抜かしてしまいました。
とは言え、比較してるのにマルチサポートに不利でもありますし、考えたいと思います。
マルチサポートの珪酸成分は12%で100kg分には12kgの珪酸が入ってることになります。
結構な量です。
これを珪酸肥料、例えば「ケイカル」珪酸30% 苦土3% 20kg 428円で賄うと
ケイカル40kgで珪酸12kgになるので856円かかります。苦土1,2kgのおまけ付き。
これでミネラルサポート100kg 9510円
同等(以上の)成分を単肥で入れたときは4905円となりました。
これでもまだまだ価格差があります。あくまで単純な成分対コストの比較ですので、ご参考程度にお願いします。
あともう一つ重要なこと。
今回の単肥の殆どはジャパンバイオファーム社の物なので支払いが納品後1ヶ月以内とかです。
また独自にトラック便を仕立てて大量にまとめ買いする必要があります。
比べてマルチサポートはJAで買えますので、いつでも好きなときに買えますし、
何より支払いが秋払いでも良かったりします。
これも重要な比較事項ですので追記とさせていただきました。